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G検定の学習|人工知能(AI)の概要と歴史を解説

本記事では、G検定の出題範囲でもある人工知能の概要、歴史について解説します。

人工知能(AI)の概要

人工知能(AI)とは

人工知能(AI)は、Artificial Intelligenceの訳で、AIとよく略されています。コンピュータによる知的な情報処理システムを設計、または実現することが目的の研究分野です。

身近なところでは、AppleのiPhoneやMacに搭載されている音声アプリ「Siri」、Googleの音声入力機能、音声検索、Amazonなどでおすすめの商品を提案する「レコメンド・システム」があります。

スマートスピーカーのGoogle Homeに向かって「OK、Google 今日の天気を教えて」と声をかけると天気予報を教えてくてます。これは、ディープラーニングによる音声認識技術によって動作しています。

また、人工知能は、パソコンやスマートフォンだけでなくロボットの制御にも使われています。2015年にソフトバンク社が人型ロボット「Pepper」、2019年にGROOVE X社の家庭用ロボット「LOVOT」のように、人工知能(AI)を搭載した家庭用ロボットも実用化されています。

自動車業界では、2021年3月にホンダが世界で初めて自動運転「レベル3」搭載のセダン「レジェンド・Hybrid EX ・Honda SENSING Elite」を市販化しています。レベル3のクルマは、特定条件下における自動運転になります。

このように、人工知能(AI)は身近な商品・サービスに組み込まれて利活用されており、多くの人が一度は利用したことがあるかもしれません。

人工知能の発達に伴って、私たちの身の回りの当たり前に思っていることも変わっていくでしょう。
例えば、東京オリンピック2020には、ドライバー無しの自動運転タクシーの実現を目指しています。

 

メモ

【用語解説】シンギュラリティ

人工知能(AI)が人間の知能を超えること。2005年レイ・カーツワイルは自著「The Singularity is Near」で「シンギュラリティは2045年に到来する」と提唱した。2045年には人間が自分自身よりも賢い人工知能を作り出すことにより起きる技術的特異点のこと。

 

人工知能を研究する方は多くいるが、その定義は専門家によって解釈は異なっており、現在明確な定義はありません。

例えば、以下のように定義されることがあります。

松尾 豊 人工的につくられた人間のような知能、ないしじゃそれを作る技術

溝口理一郎 人工的につくった知的な振る舞いをするもの(システム)である

長尾 真 人間の頭脳活動を極限までシュミレートするシステムである


出典:松尾 豊 人工知能は人間を超えるか(KADOKAWA)

定義は様々ですが、人工知能の名前通り、いずれもヒトが作った人工知能であることには変わりません。

 

人工知能の分類

特化型人工知能と汎用型人工知能は、人工知能を分類するための概念です。

汎用型人工知能(Artificial General Intelligence)

特定の領域のみに対応するのではなく、人間と同じように様々な知的作業を処理できる人工知能を指します。

人工知能は、SF作品などに登場するこの汎用型人工知能をイメージすることが多いかもしれません。

特化型人工知能(Narrow AI)

ある特定の領域に特化された課題の処理を行う人工知能を指します。

音声認識や顔認証などで使われている身近な技術となっており、ある分野に限定すれば人間より高い性能を出せるというものです。

例えば、DeepMind社が開発した囲碁に特化された人工知能「AlphaGo(アルファ碁)」やiPhoneなどで操作する目的に特化された人工知能「Siri」があります。

今世の中に存在する人工知能は、特化型人工知能のみで、汎用型人工知能は実現されていません。

強いAIと弱いAI

強いAIと弱いAIは、アメリカの哲学者ジョン・サールによって論文で提示された区分です。

強いAIは、人間の知能のようにあらゆる問題に適切に対処できるAIのことです。例えば、ターミネーターや鉄腕アトムなどのAIは強いAIにあたります。先述の汎用型人工知能は強いAIに分類されます。

弱いAIは、限定的な課題の処理を行うためのAIです。例えば、将棋に関する特定の課題のみを処理できるAIは弱いAIにあたります。先述の特化型人工知能は弱いAIに分類されます。

メモ

【用語解説】AI効果

人工知能プログラムの中身がわかってしまうと、単なる自動化であって人工知能ではないと考えてしまう現象

メモ

【用語解説】ELIZA(エライザ)効果

意識的にわかっていても、無意識的コンピュータが人間と似た動機があるように感じてしまう現象

 

「エージェントアプローチ(Stuart Russell)」での分類

  • レベル1

シンプルな制御プログラム。シンプルな制御プログラムを搭載している一般的な家電製品で、すべての動作を事前に決められているものが該当します。例えば、外気温や日射熱などから自動で室内温度を調整するエアコン。

  • レベル2

古典的な人工知能。探索・推論を行ったり、知識データを利用することで、状況に応じて様々なパターンで振る舞いを行うもの掃除ロボットや診断プログラム、将棋プログラムなどが該当します。

  • レベル3

機械学習を取り入れた人工知能。サンプルとなるデータをもとに、ルールやパターンを学習する。検索エンジンやビッグデータをもとに自動的に判断したりするようなものが該当します。

  • レベル4

ディープラーニング(Deep Learning)を取り入れた人工知能。

人工知能の歴史

ここでは、人工知能の歴史を以下に示す3回のAIブームに沿って解説します。

AIブームのあゆみ

  • 第1次AIブーム:1950年代後半から1960年代
  • 第2次AIブーム:1980年代から1990年代
  • 第3次AIブーム:2000年代〜

第1次AIブーム:1950年代後半から1960年代

20世紀前半から神経科学の発展に伴い、脳や神経細胞の働きが少しずつ明らかになったことで、人間の神経回路を模することで人工的に知能が作れないかという議論が20世紀半ばに始まりました。

最初のAIブームは、コンピュータで「推論・探索」をすることで特定の問題を解くことができるようになったことが話題となり流行しました。

しかし、簡単な迷路など「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」に限られることが明らかになり、複雑な現実の問題を解くことはできなかったため、1970年代から人工知能研究は冬の時代を迎えました。

メモ

【用語解説】エニアック(ENIAC:Electronic Numerical Integrator and Computer)

1946年に、ペンシルベニア大学で開発された汎用電子コンピュータ

 

「人工知能の父」と呼ばれる人物は2人います。

Alan Mathison Turing
出典:ja.wikipedia.org

1人はイギリスの数学者アラン・チューリング(1912-1954)です。

人工知能の概念を初めて提唱した人物であり、チューリングマシンという現代のコンピュータの原理となる理論を作り出しました。

第二次世界大戦中、チューリングらは、暗号解読機であるチューリングボンベ(電気式のアナログ探索装置)を完成させてドイツ軍の使用していた文章を暗号化する暗号機エニグマ(ENIGMA)の暗号解読に大きく貢献しました。

Marvin Lee Minsky
出典:Ja.wikipedia.org

もう1人の「人工知能の父」と呼ばれるマービン・ミンスキーは、アメリカのコンピュータ科学者であり、認知科学者です。1951年にミンスキーは、世界初のニューラルネットワークを利用した機械学習デバイスを作りました。

メモ

1956年、計算機科学者であるジョン・マッカシーがアメリカのダートマス大学で開催した「ダートマス会議」の提案書において初めて「人工知能」という言葉を初めて使いました。

第2次AIブーム:1980年代から1990年代半ば

当時の人工知能の研究は、専門家のように特定の分野にのみ特化したエキスパートシステムと呼ばれるものが主流でした。

エキスパートシステムは、人工知能に専門家の知識を取り込ませた上で推論することで、様々な問題に対して専門家と同様の判断ができるようなプログラムです。

日本では、政府による「第五世代コンピュータ」と呼ばれるプロジェクトが推進されました。

当時は、人間の専門家の知識をコンピュータにとって理解できるように膨大な量のルールと作成と入力が必要でした。

活用可能な専門家の知識の定式化は難しく、用途が限定的な分野に限られていたためAIへの期待は低下し1995年頃に再び冬の時代を迎えました。

メモ

【用語解説】エキスパートシステム

条件分岐によるプログラム。1972年スタンフォード大学で開発されたMYCIN(マイシン)という抗生物質を処方する医療診断を支援するプログラムが世界初とされています。

第3次AIブーム:2000年代から現在

2006年にジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)らがディープラーニング(Deep Learning)を提唱しました。

2012年には、ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)という画像認識コンテストにおいて、従来の手法はエラー率25〜26%程度で競い合っていましたが、ジェフリー・ヒントン教授が率いるカナダ・トロント大学のチームがディープラーニングを用いた技術により17%程度まで下げて優勝しました。

これが第3次AIブームの火付け役ともなりました。

それ以降、エラー率を下げることが可能であろうということで、世界中の企業、研究者がディープラーニングの研究を進めました。

2015年には、DeepMind社による囲碁対戦用AI「AlphaGo」が人間のプロ囲碁棋士に勝利したことにより、ディープラーニングはさらに注目を集めました。

いまやAIに関する技術が進歩し、世界中でAIの活用が進んでいます。私たちの日常生活でも利用している顔認証や音声認識、自動翻訳などに使われています。

教育分野において、アメリカではAIを応用するための統計やデータサイエンスに関する学位を取得できる大学・大学院が多く存在しています。

日本では、AI活用に関わる人材の育成のために「AI戦略2019」を策定しました。全ての学生に「数理・データサイエンス・AI」に関する教育や「リカレント教育」を実施することを発表しています。

2020年度から小学校で「プログラミング教育」が必修科、高校では2022年度から「情報I」が必修科目となります。

まとめ

今回は、人工知能の概要、歴史について解説しました。

これから、人工知能(AI)を学んでいく上で少しでもお役に立てれば幸いです。

 

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